大阪地方裁判所 平成5年(ワ)5455号 判決 1994年7月06日
原告 條康子
右訴訟代理人弁護士 野間督司
被告 日本生命保険相互会社
右代表者代表取締役 伊藤助成
右訴訟代理人弁護士 山下孝之
櫻田典子
主文
一 被告は、原告に対し、金四四一万七八九五円及びこれに対する平成五年六月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを五分し、その四を原告の、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一申立
一 原告
1 被告は原告に対し、金二三五七万四六六〇円及びこれに対する平成五年六月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行の宣言
二 被告
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 仮執行免脱の宣言
第二事案の概要
一 事案の要旨
本件は、原告が生命保険会社である被告との間で変額保険契約を締結したところ、その運用実績が思わしくなく、約二年半後にこれを解約したものの、当初の払込保険料(五二二四万〇五〇〇円)を大幅に下回る解約払戻金(三七五一万四一八二円)しか返還されなかったことから、被告に対し、主位的に、被告による元本保証及び利益保証約定の不履行を理由に、予備的に、被告外務員の違法な募集に関する被告の責任(保険募集の取締に関する法律一一条一項)を理由に、二三五七万四六六〇円の損害賠償とこれに対する平成五年六月三〇日(訴状送達の日の翌日)以降の遅延損害金の支払を求めた事案である。
二 争いのない事実等
1 当事者等
(一) 原告は、大正一五年生まれの女性であり、本件以前から、学校法人法輪学園の理事長及び同法人経営にかかる母智幼稚園の園長をしている。
(二) 被告は生命保険事業等を営む相互会社である。
(三) 訴外吉田正孝(以下「吉田」という)は、被告の従業員(生命保険募集人)であり、本件以前から、被告を保険者とする保険契約の勧誘等を担当している。
2 原告関係の保険契約
原告は、吉田の勧誘に応じて、別紙「保険契約一覧表」≪省略≫記載のとおり、本件を含め一六口の保険契約を締結している。同一覧表の契約者又は被保険者欄の土居宅子は原告の長女、土居勗はその夫、島岡佳子は原告の二女、島岡昌生及び島岡亨生はその子であり、名義上の保険契約者は原告以外の者もあるが、いずれも原告が契約を締結し、保険料の支払もしている(原告本人)。なお、本件以外の一五口はいずれも定額保険である。
3 変額保険とその募集
変額保険(終身型)は、昭和六一年七月に初めて認可され、同年一〇月から発売が開始されたものであるが、従来の生命保険が利息・配当金収入を中心とした安全性重視の運用を行い、運用成果が予定利率を下回った場合でも所定の給付額(保険金額・払戻額)が保証されていたものであるのに対し、変額保険契約の資産を運用するために設定された特別勘定においてその資産を運用し、運用対象の株式等の評価損益や売買差損益まで含めた総合収益を追求し、その運用実績に基づき、保険金額や解約払戻金を変動させる仕組みの生命保険であり、死亡・高度障害の際の基本保険金額が保証されるだけで変動保険金の額には保証がなく、契約を解除した場合の解約払戻金の額も右運用実績に応じて増減し、最低保証されるものでない。
したがって、経済・金融情勢、運用の巧拙によって高い収益が期待できる反面、保険契約者が変動のリスクも負うことになり、このような保険契約者の自己責任原則に基づく保険は、我が国ではそれまで存在しなかったものである。
なお、保険募集の取締に関する法律(以下「募取法」という)は、保険募集に関する規制を行い、保険契約者の保護等を図っているが、変額保険が右のように投資リスクを伴う特殊な保険であり、募取法の一般的規制では十分でないことから、大蔵省の通達(昭和六一年七月一日蔵銀第一九三三号「変額保険の販売資格制度および募集上の留意事項について」)により、証券取引に関する投資勧誘規制を参考とした内容の規制を定めている。吉田も変額保険募集員の資格を有している(証人吉田)。
4 本件契約の成立
吉田は、原告に対し、「エクセレント・ニッセイ変額保険(終身型)」と題する保険設計書(≪省略≫、以下「本件設計書」という)を示すなどして、被告と変額保険契約を締結することを勧誘し、原告は右勧誘を受けて、吉田に対し、平成二年九月二八日、その設計書に従った変額保険契約を申込み、保険料に充当すべきものとして五二二四万〇五〇〇円を支払い、同年一〇月一日、被保険者である土居勗が診査を受け、同年一一月一日を契約日とする左記の保険契約(以下「本件契約」という)が成立した。なお、本件契約には、利益配当付変額保険(終身型六一)普通保険約款が適用される。
記
(一) 証券記号番号 八〇五―四三五〇二二
(二) 保険の種類 変額保険
(三) 保険期間 終身
(四) 保険契約者 原告
(五) 被保険者 土居勗
(六) 死亡保険金受取人 原告
(七) 主契約基本保険金額 一億五〇〇〇万円
(八) 保険料 五二二四万五〇〇円
(九) 払込方法 一時払い
5 本件契約の解約
原告は、平成五年三月一二日、本件契約を解約し、同日、被告から解約払戻金三七四六万五六四三円と積立配当金四万八五三九円(以下、両者を併せて「本件払戻金」という)を受領した。
三 原告の主張
1 被告の責任―債務不履行(主位的請求)
吉田は原告に対して本件契約を勧誘するに際し、
(一) 本件契約は銀行預金と同じような性質であること、
(二) 金利は契約時年七・一七二パーセントで、一〇年経過後は年九・五二五パーセントであって、銀行預金よりも有利であること、
(三) いつでも解約が可能であること、
(四) 元金は変わらないこと、
(五) 預けた金額の三倍の保障がついていること、
など高収益性、有利性のみを強調して説明し、他方、変額保険の特殊性や危険性について全く説明しなかった(右吉田の説明のうち、(三)(五)については当事者間に争いがない)。
したがって、本件契約は元金(払込保険料)及びこれに対する年七・一七二パーセントの利益が保証された契約というべきである。
よって、被告は、原告に対し、右利益保証を含む本件契約の債務不履行に基づく損害賠償として、払込保険料の元本五二二四万〇五〇〇円に本件契約の契約日である平成二年一一月一日から解約日である平成五年三月一二日までの年七・一七二パーセントの利率による金利八八四万八三四二円を加えた六一〇八万八八四二円から本件払戻金三七五一万四一八二円を控除した差額二三五七万四六六〇円を支払う義務がある。
仮に右年七・一七二パーセントの利益保証が認められないとしても、吉田は、銀行預金金利よりも有利であるとして本件契約を締結させたものであるから、少なくとも本件契約締結当時の銀行預金の最低利率年三・五パーセントの利益保証をしたというべきである。
2 被告の責任―募取法一一条一項(予備的請求)
原告は、相続税対策もあって吉田の勧めに従って、平成元年四月から平成二年八月までの間に別紙「保険契約一覧表」のとおり七口の保険に加入したが、そのころ銀行に預金していた不動産売却代金を元に土地の購入を計画していた。被告は、系列下に不動産関連会社も有しており、吉田は、原告の依頼で土地の紹介もしていたが、原告が銀行預金金利が下がってきていることを洩らしたことをきっかけとして、本件契約を勧めるようになった。そして、吉田は、右預金が代替地取得資金であり、原告としてはそれまでの一時的運用を考えていたにすぎず、過大なリスクを負う投資をするつもりなどないことを知りながら、元本割れの危険もあり、資金運用のリスクを保険契約者が負うことになる本件契約を勧めたうえ、原告にそのような危険性があることを充分に知悉させる義務(募取法一六条)を怠り、前記のように高収益性や有利性のみを強調し、その特殊性や危険性をなんら説明せず、本件契約を締結させ、前項同様の損害を被らせた。
被告は本件設計書には解約払戻金が変動する旨明示されているというが、変額保険は従来の生命保険とは全く異なる性格のものであるから、設計書を正確に読み取るためには保険に関する予備知識が必要であるうえ、よほど注意深く読まない限り素人には容易に右危険性を理解することができない。また、生命保険契約を締結する場合、保険知識の乏しい契約者は外務員の説明に頼るのが通常で、保険設計書や定款・約款(≪省略≫)等を冷静に読むことは少ないところ、原告も同様であり、吉田はそれを認識していた。
しかも吉田は、本件設計書のうち、有利な運用利率分のみをラインマーカーで強調し、ゴム印を用いて、経過年数五年で運用実績「七・一七二%」、同一〇年で「九・五二五%」と記載し、ことさらにハイリターン部分のみに目を奪われるように意図していた。
よって、吉田の本件契約の募集は、変額保険の特殊性やその危険性について全く説明をせず、銀行金利よりはるかに有利であるなどとその高収益性を強調し、その旨の文書(本件設計書)を交付するなどしてなされ、その結果原告を信用させて締結に至ったものであり、募取法一五条二項(募集文書図画には、保険会社の将来における利益の配当又は剰余金の分配についての予想に関する事項を記載してはならない)、一六条一項四号(締結又は募集に関する禁止行為―保険契約者又は被保険者に対して特別の利益の提供を約し、又は保険料の割引、割戻その他特別の利益を提供する行為)等に違反し違法なものであるから、その使用者である被告は、同法一一条一項(所属保険会社は、生命保険募集人が募集につき保険契約者に加えた損害を賠償する責に任ずる)に基づき原告が被った前記損害を賠償する義務がある。
3 過失相殺の対象
仮に過失相殺がなされるとしても、原告が被った損害は、同人が支払った払込保険料及びそれに対する約定にかかる利益保証分の合計から受領した本件払戻金を控除した残額であるから、それを相殺の対象とすべきであって、払込保険料全額を過失相殺の対象とすべきではない。
四 被告の主張
1 被告の責任について
吉田は、平成二年六月ころ、原告に変額保険を紹介し、保険設計書数通を作成し、原告に示したり手渡して話し合いをした後、同年九月ころ、最終設計書である本件設計書を同人に手渡した。
ところで、本件設計書には、変額保険にかかわる資産は、上場株式、公社債等の有価証券を主体として運用し、その運用実績に応じて保険金額・解約払戻金額が変動し、一定でない旨の説明とその関係を図示し、さらに、特別勘定の資産の運用実績例表として「九%の場合」「四・五%の場合」「〇%の場合」の保険金額・解約払戻金額を例示し、加えて「運用実績および配当実績により変動(上下)しますので、将来のお支払い額を約束するものではありません」と記載してあるもので、これを一覧すれば、基本保険金の一億五〇〇〇万円は保証されているが、変額保険金及び解約払戻金は運用実績に対応するものであり、解約払戻金が保険料を下回るリスクを負うことは明らかである。また、右運用実績例表において、極めて大きな幅のある数字を示していることからも、この利率での運用を保証したり、経済変動を予測して一定の数字を提示したものでないことは明らかである。
そして、吉田は原告に対し、本件設計書を示しつつ、記載されている変額保険の仕組みを表す図表及び右のとおり保険の内容や特質を容易に理解し得るように工夫された運用実績例表に基づいて、保険金及び解約払戻金の金額が変動することや、右表に記載された数値は例示であってこの金額を保証する趣旨ではないことなどを説明した。また、遅くとも同年一一月初めころには、変額保険の詳細が記載されている「ご契約のしおり 定款・約款」(以下「本件しおり」という)を原告に交付している。
なお、吉田は、原告に対して、主に九パーセントの運用実績を例として説明し、その場合の実質金利を説明するために、原告主張のゴム印を用いて利率の記載をしているが、例としての説明にすぎず、利回りを保証したのではない。また、銀行預金金利相当の利回りとして年三・五パーセントの保証をしたこともない。
以上のとおり、被告は、原告に対し、元本保証や利益保証をしたことはないから、債務不履行に基づく損害賠償責任はない。また、本件設計書に将来の利益配当予想を記載したり、特別の利益の提供を約したことはなく、変額保険が運用実績に応じて変動する保険であることの説明は尽くされており、原告は、変額保険への加入により利益を期待できる一方で投資リスクもまた負わなければならないことも認識できたはずであり、吉田の募集になんら違法な点はないから、被告には、募取法一一条一項に基づく損害賠償責任もない。
2 過失相殺
吉田は、本件契約が変額保険であること及びその仕組みについて十分な説明をしているが、仮に原告において了知しておらず、その点について吉田に過失があったとしても、原告は社会的に活躍しており、多額の金銭を動かしたこともあり、金利の変動等についての知識もあるから、交付された本件設計書や本件しおりを一読すれば、本件契約が変額保険であること及び変額保険の仕組みについて容易に知り得たはずであり、また、その後も毎年度の特別勘定の決算書、解約払戻金・保険金の変動を報告する「ニッセイ・ライフ・インフォメーション」等の各種書類を送付しており、これらを見れば変額保険であることも解約払戻金が払込保険料を下回っていることも容易に知ることができる。さらに、原告が本件契約を解約した後、解約払戻金の金額は増加しており、かつ、原告はこれを予想することができたから、右増加分は原告の性急な解約により生じたものである。
これらの事情を考慮すれば、相当額の過失相殺がなされるべきである。
五 争点
1 元本保証及び利益保証の存否
2 吉田の勧誘の違法性の有無
3 損害額
4 過失相殺の適否、対象及び割合
第三争点に対する判断
一 事実の経過
証拠(証人吉田正孝の証言、原告本人尋問の結果のほか各項に示す書証)によると、次の事実が認められる。
1 本件契約に至る経緯
(一) 原告は、大阪府茨木市に土地を所有し、二女の島岡佳子を住まわせており、将来は同女に相続させる心づもりでいたが、付近の環境が悪化したため、昭和六二、三年ころ、約八〇〇〇万円で売却し、二女のために新規に土地を購入する予定で銀行に預金していた。
(二) 吉田は、昭和五七年ころ原告の経営する学校法人法輪学園の法人生命保険契約を勧誘したことから原告と知り合い、平成元年四月ころ、顧客開拓の一環として再び原告に生命保険を勧めるようになった。
原告は、相続税対策の必要があったことから、吉田の勧めに従って、平成元年四月一七日を初めとして本件契約までに保険契約一覧表①ないし⑦の七口の保険契約を締結した(年間の支払保険料九二二万五〇一〇円)。
それと並行して、原告は、吉田や知人らに土地の斡旋を依頼しており、吉田は、得意先である原告への営業サービスの一つとしてこれに協力すべく、被告傘下の不動産会社に適地の紹介を依頼するとともに、自らも兵庫県三田市の購入候補地の視察に同道するなどしていたが、思わしい土地が見つからず、土地購入は具体化しないまま日時が経過していった。
(三) そのような折りの平成二年八月ころ、原告が吉田に対し、右土地購入予定資金を銀行に預金しているが、預金金利がどんどん下がると不満を漏らしたことから、吉田は、銀行預金より有利な運用が可能であるとして、変額保険での運用を勧誘するようになった。
そこで、吉田は、平成二年の夏ころから、原告に示すために数次にわたって保険設計書の作成を試み、同年九月一七日には、原告が実際に予定している投資金額に合わせ、本件設計書(≪省略≫)を完成させたうえ、同月二一日、本件の変額保険の生命保険契約申込書(以下「本件申込書」という)とともに同設計書を原告宅に持参して手渡し、原告に変額保険の概要を説明した。
そして、同月二八日、原告から署名捺印された本件申込書(≪省略≫)が吉田に交付されるとともに、一時払いの保険料への充当が予定されている保険料全額に相当する五二二四万〇五〇〇円が支払われ、同年一〇月一日、被保険者土居勗の健康診査が行われ、同月一二日、被告従業員田中武比古によって右被保険者と契約者の意思確認がなされ(≪省略≫)、同年一一月一日を契約日(保険期間の始期)とする本契約が成立した(≪省略≫)。
(四) なお、原告は、学校法人の理事長などをしている関係から、学園の建替え工事などで多額の資金を動かしたことはあるが、本件契約を締結するまで株式等比較的リスクの高い商品への投資などをしたことはなかった。
2 本件契約の内容に係る書面
(一) 本件設計書(≪省略≫)
本件設計書は、被告を保険者とする変額保険契約の概要に関するA3大・横書・三枚綴りの保険設計に係る説明書であり、一枚目は表紙であるが、二枚目及び三枚目には、以下のとおり印刷されている。
(1) 二枚目
変額保険に関する一般的説明と付加特約の説明が記載されており、変額保険に関する説明は左側の上方三分の一ほどのスペースに、左記のとおり、保険金に関する説明や特別勘定・運用対象に関する説明がある。
記
「〔基本保険金〕
ご契約の際にお決めいただく保険金のことで、死亡・高度障害のときにこの保険金は最低保証します。
〔変動保険金〕
変動保険金は、運用実績により増減する前月末の積立金をもとに毎月1日に計算される保険金です。
〔死亡・高度障害保険金〕
基本保険金額と、死亡した日または高度障害状態に該当した日の属する月の変動保険金額の合計額です。ただし、変動保険金額が負の場合でも、最低保証により基本保険金額を下回ることはありません。
〔変額保険にかかわる資産の管理・運用について〕
・特別勘定とは……
変額保険にかかわる資産の管理・運用を行うもので、他の保険種類にかかわる資産とは区分し、独立して管理・運用を行います。
・運用対象
上場株式、公社債等の有価証券を主体とした運用を行うこととし、具体的投資対象は国内外の経済・金融情勢、株式・公社債市場の動向等を勘案して決定します。
※ご契約者は、経済情勢や運用如何により高い収益を期待できますが、一方で株価の低下や為替の変動による投資リスクを負うことになります。」
(2) 三枚目
本件契約に関する具体的な被保険者及び保険料を前提とした説明が記載されており、中ほどから右側にかけての上方には、「変額保険の仕組み」が(例1)(例2)として図解≪省略≫されているが、併せて、「この保険は運用実績に応じて保険金額が変動します。したがって、下図(例1)(例2)≪省略≫のように保険金額は上下し、一定ではありません」と付記されている。
また、中央部には、下表のような「特別勘定の資産の運用実績例表」≪省略≫(以下「例表」という)が掲載されており、保険料に対応した経過年数及び運用実績別の死亡・高度障害保険金及び解約払戻金の計算結果が打ち込まれており、解約払戻金が運用実績によって上下することが示され、かつ、同表上部には、「変額保険は保険金額・解約払戻金額が変動する仕組の保険ですが、保険の内容、特質をご理解いただくために下記例表を掲載しています。この例表の数値は、当商品のパンフレットにもご説明のとおり、運用実績および配当実績により変動(上下)しますので、将来のお支払額を約束するものではありません」(「運用実績」以下はゴチック体)と記載されている。
(3) 三枚目の書込み部分
吉田は、例表の経過年数欄に赤色、運用実績九パーセント欄の死亡・高度障害保険金欄に橙色、解約払戻金欄に緑色のラインマーカーをそれぞれ引いたうえ、右死亡・高度障害保険金欄にはさらに黒の下線を引き、右解約払戻金欄の数字の上下には赤線を引いている。そのうえ、経過年数五年の欄に「7・172%」、同一〇年の欄に「9・525%」とそれぞれゴム印で記し、赤色の二重下線を引いている。
なお、吉田は、自己が購入した「節税と利殖」と刻した大型のゴム印を赤スタンプを使って押している。
(二) 本件しおり(≪省略≫)
本件しおりは、B6大・横書・一三〇頁余の小冊子であるが、そのうち三〇頁程度が変額保険の特徴と仕組み等について図解や表を用いての説明部分、その余は被告の定款及び普通保険約款等である。
説明部分には、比較的小さい文字で変額保険の内容が詳細に説明され、解約払戻金についても二頁にわたってグラフや前記例表とほぼ同様の表が掲載され、例表と同じ運用実績例を示し、経過年数別の解約払戻金額を示している。そして、本文中には「この保険の解約払戻金は、運用実績に応じて増減します。最低保証はありませんので、払い込まれた保険料にくらべ少額となることがあります。」と記載されている。
なお、原告が吉田に平成二年九月二八日に交付した本件申込書(≪省略≫)には、本件しおりの受領印欄に原告の印鑑が押されているところ、原告は、右受領印は吉田に印鑑を渡した際に吉田が押捺したもので、その後しおりを交付されたことはないと述べ、吉田もその日に本件しおりを交付していないことは認めている。もっとも、被告は、本件しおりを同年一一月初めごろ原告に交付したと主張し、吉田も本件契約が成立した前後には本件しおりを交付していると供述する。しかし、吉田の供述によっても、交付時の具体的状況等は明らかでなく、確実に交付したと認めるには不十分というほかはない。
(三) ニッセイ・ライフ・インフォメーション(≪省略≫)
被告は、変額保険の契約者に対し、毎年契約応答日の状態で作成した一年間の変動保険金の推移と解約払戻金等を記載したお知らせを送付しており、平成三年一一月一日の状態で作成されたものには、解約払戻金が四七六六万〇四四七円、平成四年一一月一日の状態で作成されたものには、三六五九万三七六〇円と記載されている。
3 吉田の説明
(一) 本件契約の勧誘に際しての吉田の説明について、原告は、銀行預金より有利だから被告に預けるように勧められ、吉田を信頼していたから応じたものであり、吉田から元本割れ(払込保険料を基準に解約払戻金が下回ること)をする可能性についての説明は全くなく、運用実績が年九パーセントの場合の実際の利回りがゴム印の利率のとおり年七・一七二パーセント(経過年数五年)又は年九・五二五パーセント(経過年数一〇年)であることのみが強調され、本件設計書についても、他の部分の説明はなく、原告が運用実績四・五パーセントや〇パーセントの欄に疑問を呈しても、吉田が線を引いたところだけを見ればよく、他は関係がないから無視しろとまで言われた旨の供述をするのに対し、証人吉田は、本件設計書に基づいて、「変額保険の仕組み」により保険金額が増減すること及び例表における運用実績四・五パーセントや〇パーセントの例示についても説明し、元本割れの可能性があることも示唆したとして、真っ向から対立する供述をしている。
(二) そこで検討するに、原告は、学校法人の理事長や幼稚園の園長をしており、何億円もの資金を投じて学園の建替え工事を行ったこともあり、社会的知識も豊かで、経済問題などにもある程度の理解力があるものと一般的には考えられ、本件設計書を見せられて、その内容が理解できないとはいいがたい。また、原告は、吉田から利回りを一三パーセントや一一パーセントと聞いたこともあり、本件設計書で七パーセント程度になっていたため事情を尋ねたところ、いずれ九パーセント程度に持ち直すとの説明も受けていたというのであるから、吉田の話や説明を慎重に吟味すれば、保険金や解約払戻金に相当変動があることは理解しえたはずであり、吉田が記したゴム印の利率が確定的に保証されるものではないことを十分知ることができたと考えられる。
(三) しかし、原告は、本件契約まで株式等の価格変動の比較的大きい投資商品の売り買いをしたこともなく、相続税対策に役立つといわれて、吉田の言を信用して、深く考えることもなく、多数の生命保険(いずれも以前から生命保険会社が扱ってきた定額保険である)に加入してきており、金融商品の性格等に詳しい知識を有していたと思えないこと、本件契約の出発点は、土地購入資金として近いうちに使用する可能性の高い資金を銀行に普通預金しており、金利の下落から多少とも有利な運用を望んだことにあり、銀行預金より有利に運用でき、かつ、適当な土地が見つかったときにはいつでも解約できることが条件であったことに加えて、平成二年は年初から株価が暴落するなど経済情勢が急展開した年であること(公知の事実)を考慮すれば、被告の主張するような説明が十分なされ、本件設計書の記載と相まって、原告に変額保険の内容が理解できたのであれば、これまで売買したこともない株式などと連動して元本が変動し、株価等が暴落すれば元本も割り込む危険がある変額保険に加入することを唯々諾々と承諾したとは考えにくい。
また、そのような商品に土地購入予定資金として準備してある五〇〇〇万円余の金銭を投じるのであれば、当時の経済情勢から見て、吉田に対し、相当詳しく株価の動きや被告の運用実績などを質問して然るべきであるのに、原告が吉田にそのような説明を求めた形跡もなく、吉田も本件設計書を渡した以外には、口頭で特別勘定の資産が株式等の有価証券を中心に運用されている実情を説明していないことを認めている。
かえって、吉田の証言によれば、例表に基づいて元本割れする場合があることを説明したのは、せいぜい一分半か二分程度というのであり、株式などを売買した経験のない原告が、その程度の説明で元本割れもありうる変額保険に加入することを承諾したとは到底考えられない。
さらに、変額保険は、通常の保険とは異なり、その後の値動きに注意を払っておく必要があるが、吉田の証言によっても、吉田が原告にその点について注意を促したことはなく、毎月原告方に保険料の集金に訪れるだけでなく、本件契約後も生命保険の勧誘を続け、保険契約一覧表のとおり、八口もの成約を得ているにもかかわらず、吉田は、本件契約後の解約払戻金の推移について原告に説明をしたことはなく、原告からも尋ねられたこともないという。後記認定のとおり、本件契約に係る解約払戻金は、契約一年後には、運用実績〇パーセントの例よりも低下しており、原告が新たに六口の生命保険契約を締結した平成四年五月から八月にかけては支払保険料五二二四万〇五〇〇円に対し解約払戻金が三〇〇〇万円台にまで暴落していたのであり、例表に示されてもいない運用実績がマイナスの事態に陥っているのに、吉田はそのことを告げることなくあらたな契約を勧誘し、原告もその点について説明を求めることもなく新規契約に応じているのであって、原告が事情を知っていたとすれば理解しがたいことといわなければならない。
(四) 以上のような諸事情を考慮すれば、原告は、変額保険が元本割れの危険を伴うものであることを認識しておらず、必要に応じていつでも払戻を受けられ、かつ、銀行より有利に運用されるという吉田の説明を鵜呑みにして本件契約の締結に至ったと考える方が自然である。
そして、そのような事態は、吉田が、わざわざ自費で購入した「節税と利殖」などのゴム印を押したり、運用実績九パーセントの場合の例示をラインマーカーやゴム印を用いてことさら強調した本件設計書を原告に示し、当時の被告の運用実績から元本割れなど考えもしていなかった状況のもとで、銀行預金よりもはるかに有利に運用できることを強調し、自己を信頼している原告を勧誘して変額保険に加入させたものであり、仮に元本割れがありうる点について、書面上の該当箇所を示したとしても、その危険性についての説明は、極く短時間の型通りのものにすぎず、高率の運用実績の場合に相当の比重を置いた説明であったことに起因するものと推認するのが相当である。
吉田は、本件契約ころまでに多数の変額保険を勧誘していたが、保険計画書で説明すると、例表の各経過年数に対応する解約払戻金の金額が、運用実績の利率を乗じた金額と異なることを指摘されることが多かったことから、払込保険料の金額と解約払込金の金額の関係に対応した利回りを計算して「実質金利」として契約者に示してきており、また、被告のそれまでの運用実績を考慮して、例表の運用実績九パーセントの場合にラインマーカーを引いて説明したにすぎず、ことさらに高利回りの場合のみを説明したわけではないと述べており、これを否定すべき事情も認められないが、吉田の意図がどうであれ、客観的に前述のような役割を果たしたことは否定できない。
4 その後の経緯
(一) 本件契約の特別勘定に係る資産の運用成績を反映した各月末の解約払戻金は、下表≪省略≫のとおりであり、吉田の勧誘時の予測に反して、その後必ずしも思わしくなく、平成三年春ころ一時持ち直しただけで、その後はほぼ一貫して下降線をたどっており、例表に示された運用実績〇パーセントの場合をも割り込んで、大幅なマイナスになっている(≪省略≫)。
(二) 原告に対し、平成三年一一月と平成四年一一月にそれぞれの運用実績による解約払戻金等の記載されたニッセイ・ライフ・インフォメーションが送付されているが、原告は、平成三年分は気付かず、平成四年分を見て、解約払戻金が三六五九万三七六〇円となっていることに気付き、被告と交渉したが解決が得られず、知人の示唆も受けて平成五年三月一二日に解約し、本件払戻金を受領した。なお、平成三年分について、原告は送付も受けていないと述べているが、被告の担当部局から契約者に対して機械的に送付されるものであることからすると、送付自体はされていたと認めるのが相当である。しかし、多数の保険に加入していた原告がその一通をたまたま確認しなかったことがあったとしても不思議ではないし、現実に原告が見ておれば、その時点でも既に四五八万余円の元本割れをしていたのであるから、毎月保険料の集金に訪れていた吉田に尋ねもしないはずはなく、その時点で何ら問題が生じていないことからすれば、原告自身の目に止まらなかったものと推測するのが相当であろう。
二 元本保証及び利益保証の存否(争点1)について
先に認定したとおり、本件契約を勧誘するに当たっての吉田の原告に対する説明は、銀行預金よりも高利回りで資金運用がされていることを中心にしたものであり、変額保険の特質の説明が十分であったとはいいがたい状況にあるが、さりとて具体的に一定の利回りを保証したとみるべき証拠もない。ゴム印の利率の記載もその体裁からすれば、運用実績九パーセントの場合の実質金利を示すものと理解できるし、説明が不十分であったとしても、本件設計書には、運用実績〇パーセントの場合も例記されているのであるから、解約払戻金が保険料の運用実績によって変動することは示されているのであって、吉田の説明や交付した書面の各記載からみても、本件契約に際し、元本(支払保険料)保証及び利益保証がなされたものとまでは認められない。また、吉田は、銀行預金よりも有利に運用されている実績を述べたことはあるが、それをもって銀行金利相当の三・五パーセントの利回りを保証したと解するのも相当ではない。
よって、原告の主位的請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
三 吉田の勧誘の違法性の有無(争点2)について
1 前記のとおり変額保険は契約者が変動のリスクを負うという従来の保険にはない特質を有するものであり、保険会社と契約する者にとってなじみのある商品ではなく、右特質が世間一般に浸透していたとまではいえない状況にあった。
ところで、保険会社は法制度上特別の地位を与えられ、保険に関する知識・経験も豊富であり、契約者も自己に相応しい保険は何か等について保険会社ないし生命保険募集人の知識・経験を信頼してその助言を参考にするのが通常であるから、変額保険に関する右特質及び状況に鑑みると、保険会社はその勧誘にあたっては、信義則上、契約者が契約の結果、不測の損失を被ることがないよう十分に配慮すべき義務があるというべきである。具体的には、契約者の方から加入を積極的に求めてきた場合や契約者にあらかじめ十分な知識があることが明らかな場合は別として、保険会社の側から積極的に勧誘する場合には、契約者には従来の保険に関する程度の認識しかないことを念頭に、従来の保険との本質的ないし重要な相違点を十分に説明すべき義務がある。したがって、これを欠いたことによって契約が締結され、契約者が損失を被ったときは、不法行為が成立しうるというべきである。
そして従来の保険との相違点としては、変動部分の保険金や解約払戻金が特別勘定の運用実績に連動しており、運用対象である株式等の相場変動の影響を受けるため、右解約払戻金等に相当幅のある変動が生じ、場合によっては元本割れする場合もありうることが理解できる程度の説明をしなければならない。
2 ところで、本件設計書には、右のような内容が記載され、運用実績が〇パーセントの例も示されており、全体に目を通せば、変額保険の概要を知り、元本割れもありうることが理解できる資料となっており、一般的には説明にかわるものとして一応の評価をすることはできる。
しかし、本件設計書は、株価の暴落などを経て、現実にマイナスの運用になっている保険会社も現れている状況になっていたにもかかわらず(≪省略≫)、運用実績がマイナスになる場合の例示をしていないのであって、説明書としても万全のものといえないのみならず、保険契約への加入者は、勧誘者から特に留意すべき点を指摘されたりしない限り、勧誘員の説明に加えて自らこれらを子細に検討するとは限らないし、ことに設計書の一部のみが強調されたりして、リスク部分の認識の妨げとなるような言動が伴う場合には、設計書の正しい理解を妨げることもあるから、単に書面を交付していることのみによって、説明義務が尽くされていると速断することはできない。
3 そこで、本件についてみるに、先に判断したとおり、吉田は、土地購入予定資金として銀行に預金しており、適当な物件があればすぐにでも購入する予定があり、リスク商品への投資などにまわす意図のない原告に対し、銀行預金より利回りがよいとして変額保険を勧め、それが従来の保険と異なり、ハイリスク・ハイリターンの投資商品であり、被告による株式等の運用実績に応じ解約払戻金等が増減し、元本割れもありうることを十分説明しなかっただけでなく、吉田自身も元本割れの危険など考えていなかったこともあって、ラインマーカーを引き、わざわざゴム印で実質金利を示すなどして、運用実績九パーセントの例を中心に高利回りが期待できると誤解させるような説明をしたものであって、吉田の意図はともかく、少なくとも元本割れの危険性の存在についての認識を困難にする作用を有していたことは否定できない。もとより、本件のように運用実績がマイナスになることは説明していない。
他方、原告は吉田から本件契約が銀行預金よりも有利であるとして積極的に勧誘され、特別勘定の運用実績のいかんによっては元本割れの危険性があることなどを十分に認識することなく、銀行預金よりも有利に運用できて、いつでも解約できる程度の理解で本件契約を締結したことは先に判断したとおりである。
そして、原告が右の程度の理解によって本件契約を締結したのは、吉田の勧誘が変額保険の高利回り性や有利性をことさら強調して説明したことやリスクについての説明が不十分であったことにその原因の一端があったというべきであり、また、原告が変額保険について正しく認識していないことは、原告の対応から推察することは十分可能であったというべきである。
4 以上の次第であるから、被告所属の生命保険募集人である吉田の本件契約の前記勧誘態様による募集行為には説明義務違反があり、その点に過失もあったと認められるから、右募集行為について不法行為が成立するものである。
したがって、被告は、募取法一一条一項により、吉田の募集によって原告が被った損害を賠償する義務がある。
四 損害額(争点3)について
吉田の勧誘は右のとおり説明義務に違反するところがあり、その点で違法ではあるが、前記のような吉田の行為態様からすれば、本件契約がそれによって直ちに無効となるものではなく、有効に成立していると解される。そうすると、原告の損害額は、払込保険料の五二二四万〇五〇〇円から本件払戻金の三七五一万四一八二円を控除した一四七二万六三一八円(平成五年三月一二日時点)とするのが相当である。
ところで、被告は、原告による本件契約を解約した後、解約払戻金の金額は増加しており、かつ、原告はこれを予想することができたから、右増加分は原告の性急な解約により生じたものであるとして、右増加分についての損害額の減額や過失相殺を主張する。しかし、右時点で原告がそのような事態を確実に予想しえたはずがないばかりか、一般的にも、紛争拡大ないし損害の拡大の可能性を防止するため、すみやかに損害額の確定を図ることが適切であるとさえいえるのであるから、原告が右時点で本件契約を解約したことを非難することはできず、被告の主張は理由がない。
五 過失相殺の適否、対象及び割合(争点4)について
これまでに判断してきたように、吉田には、本件契約を勧誘するについて、説明義務に違反する点があったとはいうものの、通常の知識があるものが読めば、変額保険の概要を知ることができる本件設計書を事前に交付していたのであって、吉田に故意に原告を欺罔したり、危険な取引をさせる意図があったとまでは認められず、高利回り中心の吉田の説明に対しても、原告の社会的地位を考えれば、事前に交付してある本件設計書に基づいて、一応の判断をしていると考えたとしてもあながち責められないというべきであり、吉田の違法性や過失の程度は比較的小さいものであると考えられる。これに対し、原告は、少し注意して本件設計書をみれば変額保険の概要を理解することは容易であり、吉田に疑問点を質すなどして、元本割れの危険性などを知ることはさほど困難でなかったというべきであり、このことを含め原告には五〇〇〇万円余りの大金を運用するにしてはいささか慎重さに欠ける面があったことは否めない。
しかも、被告からは原告に対し年に一度、解約払戻金額を明記したニッセイ・ライフ・インフォメーションが送付されていたのであるから、原告としては遅くとも平成三年一一月ころには、元本割れの事態に気付くことができたはずであり、その時点であれば損害は未だ四五八万円余であったから、少なくともその後の損害の拡大を防止することが期待できたというべきであり、被告から送付された右文書を閲読しなかったのは、原告側の落ち度として評価すべきことがらである(もっとも、送付された文書を見落とすこともないではないから、違法な勧誘をしながら、その事態を知りうる文書を送付しただけで、その責任の全てが解消されるものではない)。右のとおり原告にも損害の発生及び拡大について落ち度があるものと認められ、被告が賠償すべき損害額を定めるに当たっては、右落ち度を被告の違法性・過失の程度と対比して過失相殺すべきであるところ、原告の過失割合は、右の事情に照らせば、七割とするのが相当である。そして、原告の損害額は、右に述べたとおり一四七二万六三一八円であり、右金額が当然過失相殺の対象にもなるから、被告は、右損害の三割に相当する四四一万七八九五円を原告に賠償すべきである。
六 結論
よって、原告の請求は、四四一万七八九五円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成五年六月三〇日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却し、仮執行免脱の宣言は相当でないからこれを付けないこととして主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井垣敏生 裁判官 中村哲 清水俊彦)